【映画レビュー】世代を超えた友情「セントオブウーマン 夢の香り」
【セントオブウーマン 夢の香り】
キャスト
監督
出演
- アル・パチーノ(役名 フランク・スレード中佐)
- クリス・オドネル(役名 チャーリー・シムズ)
- ジェームズ・レブホーン(役名 トラスク校長)
- ガブリエル・アンウォー(役名 ドナ)
- フィリップ・シーモア・ホフマン(役名 ジョージ・ウィリス・Jr )
※私自身が印象深かった出演者を表示させていただいております。
あらすじ
貧しいながらも奨学金を得てボストンの名門校に通うチャーリー(クリス・オドネル)。
ある日、チャーリーは学校の校長が持つ車にいたずらをしている裕福な同級生を見かける。翌日、激怒した校長は、犯人を捜すために学生たちに質問調査を始める。目撃したチャーリーは同級生から口止めをされており、校長からの質問に口ごもってしまう。彼を怪しいと感じた校長は、感謝祭明けに公開の聴聞会を予定した。
そんなトラブルを抱えていたチャーリーは、感謝祭の週末に実家へ帰郷するために、アルバイトをすることを決める。
※感謝祭とは11月の第4週に1週間ほど休暇を取るアメリカのイベント。
そのアルバイト内容が、盲目の元軍人フランク(アル・パチーノ)のお世話役である。
家族はフランクを家に残して外出することになるが、彼は盲目のため、身の回りの介助が必要なのであった。
しかし、フランクは家族の外出を見計らって自分も旅行を計画しており、チャーリーは巻き込まれてしまう。
飛行機でボストンからニューヨークへ移動し、フランクは高級ホテルに泊まり、豪華な食事、美女との一夜など贅沢を尽くしていく。
フランクは頑固できかない性格だが、豪快でユーモアのある一面もあり、次第に2人の間に友情が芽生え始める。
しかし、フランクが旅行を計画した本当の理由は別にあったのだった。
そして旅行から帰るとチャーリーには公開聴聞会が待っていた。
感想
苦学生であるチャーリーと盲目の元軍人フランクのヒューマンドラマですね。旅行先では様々なことが起こり、ロードムービー的要素が含まれています。
初めは癖の強い退役軍人だと思っていたフランクでしたが、旅行の中で少しずつチャーリーとの間に友情が生まれていきます。
ストーリーの進行とともに、フランクの明るい一面と深く暗い過去を背負った一面が明らかになり、少しずつ感情移入していきました。
なぜ家族と不仲なのか。
なぜ光を失ったのか。
今回の旅行の目的は。
知れば知るほどフランクという人物に愛着がわいていきます。
終盤に差し掛かり、全校生徒が見守る聴聞会で、チャーリーは学校退学の岐路に立たされます。ふと扉が開き、フランクが聴聞会に入って来るところから、物語はピークに達します。
ラストのフランクがかっこいいのなんのって。
あと一番好きなシーンは、美女とフランクのタンゴダンスです。
チャーリーとフランクがレストランに訪れると、テーブルに一人で掛けている美女に出会い、フランクは彼女にダンスを申し込むシーンです。
とても美しいシーンになっています。
この映画を後世に語り継がれる映画にした最大の要因は、なんといっても素晴らしいことこの上ないアル・パチーノの演技です。盲目の退役軍人の感情を表情や言動、動きで見事に表現しています。
この作品でアカデミー主演男優賞を受賞したのも納得の演技です。
アル・パチーノは、役者の演技力への関心を深めてくれた存在です。「ゴッドファーザー」「スカーフェイス」「フェイク」「狼たちの午後」どれも素晴らしい演技力を見せています。
しかし、彼にも伸び悩んだ時期もあったようで、「ゴッドファーザー」から「セントオブウーマン」までおよそ20年の間、アカデミー主演男優賞を受賞したことはなく、本作で念願の受賞を果たしたというエピソードがあります。
最近、「オーシャンズ13」あたりを境に、もう衰えてしまったのかなと思うような印象を持っています。良い脚本に出会えないのかもしれませんが。
脚本全体として、校長や学校側の対応が納得できなかったり、上手くいきすぎ感が出ていたりと、突っ込みどころが多いように感じましたが、それをかばうアル・パチーノの演技力が光った作品だと思いました。
アル・パチーノの微動だにしない目の演技、見てみてはいかがでしょうか、一見の価値ありです。
監督はあまり知らないマーティン・ブレストですが、この作品が代表作といっても良いと思います。最近はあまり監督をしていないようですね。何か監督に関する情報があれば教えてほしいです。
評価 7点
【映画レビュー】2大スター演技の衝突「ファイト・クラブ」
【ファイト・クラブ】
キャスト
監督
出演
- エドワード・ノートン (役名 なし (ナレーター))
- ブラッド・ピット (役名 タイラー・ダーデン)
- ヘレナ・ボナム=カーター (役名 マーラ・シンガー )
- ミート・ローフ (役名 ロバート・ポールセン(ボブ))
- ジャレッド・レト (役名 エンジェル・フェイス)
※私自身が印象深かった出演者を表示させていただいております。
あらすじ
ナレーターである「僕」(エドワード・ノートン)は、車のリコール査定をする平凡なサラリーマン。アメリカ国内を飛行機で飛び回っていた。移動時間による時差やストレスにより、睡眠障害に悩まされているところから物語は始まる。
彼は病院に助けを求めるが、医師は自然な睡眠をとるように促して薬は処方してくれない。医師に「眠れない生活が地獄だ。」と伝えると、「本当の地獄は他にある、睾丸癌患者のサポートグループの会に参加してみなさい。」と返される。
そんな訳で睾丸癌患者のサポートグループに参加してみることに、すると実際に癌ではないのに、2人でのディスカッションで彼は大泣きをしてしまう。
すると不思議と気持ちがすっきりとし、その夜はぐっすり眠ることができた。
それが癖になり、彼は様々なサポートグループに毎日のように参加し始める。
しかしある時、女性であるマーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)が自分と同じようにサポートグループに参加するようになる。自分と同じく、病気でもないのに参加している彼女を見て彼はサポートグループで泣けなくなり、再び不眠症が進行してしまう。
そんな時、ある飛行機の中でタイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)と出会う。
フライト中の短いやりとりだったが、会話が弾みタイラーに少し好意を抱く。
その夜、「僕」は家に帰ると不運にもマンションのガス漏れが原因で部屋が全焼してしまう。彼が長年に渡り集めてきた自慢の家具や洋服はすべて吹っ飛んでしまった。
泊めてくれる友達もおらず、行く当てがない彼は、飛行機で話したタイラーからもらった名刺を思い出し、連絡しBARで飲むこととなる。
自分と正反対の性格のタイラーは、自由奔放でものに縛られない性格であり、彼に対する好意はさらに高まる。
帰り際に、泊まるところのない「僕」は、タイラーに泊めてほしいことを伝えるが、その条件にタイラーは自分のことを思いきり殴って欲しいと言い始めた。仕方なくタイラーを殴るが、仕返しに殴り返してきて、2人は殴り合いを始める。
それが快感になった。
日々のやりようのないストレスを発散する場が、サポートグループから殴り合いへと変わる。
2人は飲んでいたBARの近くで会っては殴り合いをしていたが、BARから出てきた客が集まり、一緒に参加するようになり、少しずつ規模が大きくなっていく。
殴り合いでストレスを発散するグループ「ファイト・クラブ」が結成された。
感想
なんといってもまず注目なのはエドワード・ノートンとブラッド・ピットの
2大スターの競演であるということです。
この二人の演技力は非常に高いと私は思います。エドワード・ノートンは実力派俳優として有名になり始めていた頃で、一方ブラッド・ピットも演技力に磨きがかかり「セブン」や「12モンキーズ」で高評価を得ていた時期でした。そんな2人がこの時期に競演していたというは非常に面白いです。
特にエドワード・ノートンの睡眠障害で苦しむ演技は見事でした。
脚本の方もよく考えられており、一つ一つのやり取りに伏線が張り巡らされており、非常に楽しめる構造です。
サポートグループを通して出会うマーラの存在が、重要な役目の一つで、作品をよりミステリアスな雰囲気に変えています。
マーラとの関係。
タイラーとの関係。
自分の存在。
物語が進むにつれて拡大していく「ファイト・クラブ」。
その真相とは、、、。
ブラッド・ピットはやっぱり超かっこいいですね。本能のままに生きるタイラーを演じきっていました。仕草や鍛え抜かれた肉体に男女ともに魅入ること間違いなしです。
そして先ほど伏線が張り巡らされているといいましたが、1度見ただけでは分からない面白さがあるのがこの作品の魅力の1つでもあります。2回見た方が良いというわけではなく、1回目でも2回目でも楽しめます。
私は10年ほど前にこの作品を見たときよりも面白かったです。
改めて脚本の完成度や俳優陣の演技力が高いと思いました。
デヴィット・フィンチャー監督の中でも上位に入る映画です。しかしこの監督もまた「セブン」や「エイリアン3」で名を上げ始めていた時期であるということを考えると、監督も俳優もなんてタイミングの良い時に出会っているのだろうと思いました。
物語とは直接関係ないですが、タイラーのセリフに「お前は物に支配されてる。そんな物捨ててしまえ。」というニュアンスのセリフがあります。自分の生活を振り返った時に自分もそういう一面があるなぁ、と思いました。所有欲という言葉がありますが、物は物で本当に必要な物って実はそこまで多くないのかもしれません。タイラーまで行くと大げさですが、自分も必要な物、特に道具を見極められる人になりたいと思いました。
ちなみにこの記事を書くにあたって俳優を調べていたら、ジャレット・レトが出演していることを知り驚きました。俳優をしているということは知っていましたが、全く気づけなかったし、まさか「ファイト・クラブ」に出ているとは思いませんでした。
ジャレット・レトは 30 second to marsというバンドのボーカルで有名です。とてもきれいで伸びのある声で私も好きな曲は多いので、本記事とは関係ないですが興味のある方は聞いてみることをおすすめします。
以上少し脱線しましたが「ファイト・クラブ」おすすめです。
アクション・サスペンス好きな方は見てみてください。
評価 7点(10年前に初見の時は6点でした。)
【映画レビュー】ノッキンオンヘブンズドア
【ノッキンオンヘブンズドア】
キャスト
監督
- トーマス・ヤーン
出演
- ティル・シュヴァイガー(役名 マーチン・ブレスト)
- ルディ・ウルリツァー(役名 ヤン・ヨーゼフ・リーファース)
- ルトガー・ハウアー(役名 カーチス)
※私自身が印象深かった出演者を表示させていただいております。
あらすじ
偶然めぐり合わせた2人の男の物語。
全く面識のない2人。
性格も考え方も違う2人。
自由奔放な生き方をしてきたマーチン(ティル・シュヴァイガー)とまじめにつつましく生きてきたルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)は、それぞれ急に終末期の病気が見つかってしまう。
1人は脳腫瘍。
1人は骨髄腫。
入院をすることになった2人は、偶然にも同じ病室に案内される。
全く違う生き方をしてきた2人の会話は弾むこともなく、病室には重い空気が立ち込める。
そこで偶然、病室の棚にウォッカを発見。
今後の人生への不安や自分達の運命に憤りを感じ、2人でウォッカを飲み始め、泥酔してしまう。
お酒の力を借りた彼らは意気投合。
ふとした会話の中でマーチンが「天国では海の話が流行ってるんだ。」と話し始める。
するとルディは「海は見たことがないんだ。」と話す。
マーチンは「海を見たことがないと仲間外れにされちまうぜ。」と返す。
ルディは悲しい表情を見せ、言葉に詰まってしまう。
その表情を見たマーチンはルディに海を見せるために、2人で車を窃盗し、病院を脱走することになる。
しかし、窃盗した車は偶然マフィアの車で、道中に窃盗なども繰り返したため、警察とマフィアの両方に追跡されてしまう。
感想
この作品は、典型的なロードムービーです。
ロードムービーはたくさんありますが、そのジャンルの中でもトップクラスに好きな作品の一つです。
コメディ要素も入っていて、んなわけあるかい!うまくいきすぎやんけ!と突っ込みたくなる部分はあるんですが、2人の友情とロマンが上手く合わさって、最高のエンターテイメント作品となっています。
2人と一緒に旅をしているような感覚になり、感情移入必須です。
マーチンとルディの個性がしっかりと分かれているのもグッドだと思いました。
全く違う人生を歩んできた2人が、終末期という同じ状況で出会い、残された人生で自分たちがやり残したことを実践していきます。
2人はお互いの命が短いことを理解つつ旅をしていきます。余命が残りわずかな2人が人生を楽しんでいる表情には、思わずこちらも笑顔になってしまいます。
コメディ要素や2人の掛け合いなどをもっと見ていたいと思う反面、映画が進むにつれてその先にあるであろう死を予感させられるので、どんどん映画に引き込まれていきます。
この記事を書きながら感動するシーンを思い浮かべると目が熱くなってしまいました。
そして歳をとってからの友達ってなかなかできないもので、エンターテイメント作品と知りつつも、彼ら2人を少し羨ましくも思いました。特に親友と呼べる人は社会人になると作りずらいもので、ある程度親密になる人はいても、自分が死ぬときに近くにいて欲しかったり、死に対する恐怖を打ち解けられる友人ができるっていいな。
2人の行く先に何が待ち受けているのか、、、。
気になる方は見てみてください。おすすめです。
ちなみに記事を書いてる途中で知ったのですが、前回紹介した【ブレードランナー】の敵役であるルトガー・ハウアーが出演しています。全く知らなかったので、驚きました。
「最高の人生の見つけ方」(出演 モーガンフリーマン、ジャックニコルソン)と内容的に似ていますが、主役の年齢層が違うので、私的には受け止め方が少し違いました。個人的にはこちらのほうが全体的な仕上がりとしては好きです。
評価 9点
【映画レビュー】ブレードランナー
】
キャスト
監督
出演
- ハリソン・フォード (役名 デッカード)
- ルトガー・ハウア (役名 ロイ・バッティ)
- ショーン・ヤング (役名 レイチェル)
- エドワード・ジェームズ・オルモス (役名 ガフ)
- ウィリアム・サンダーソン(J・F・セバスチャン)
- ジョー・ターケル(エルドン・タイレル博士)
※私自身が印象深かった出演者を表示させていただいております。
あらすじ
近未来
地球は深刻な環境問題により人間の居住が困難になっていた。
そこで人類は、宇地球以外の星を求め始める。
天才科学者タイレル博士は、宇宙での開拓を目的にレプリカントと呼ばれる人造人間を開発した。
レプリカントは改良を繰り返し、外見や仕草など人間と見比べても分からない造りとなっていた。特に最新型であるネクサス6型は、より人間を模した精巧な人造人間であった。
ある時、地球外で作業するネクサス6型のレプリカントは、感情を抱き始め、宇宙船を襲撃。地球へ侵入する。
警察は抑制不可になったレプリカントを破棄する専門職ブレードランナーを使い、彼らを追跡し始める。しかし、優秀なブレードランナー達が次々と消されてしまう事態となった。
そこで、ブレードランナーを引退した、元凄腕ブレードランナーであるデッカード(ハリソン・フォード)に声がかかる。 初めは捜査依頼を断っていたが、徐々に捜査に巻き込まれていく。
感想
10年ほど前に見たことがある映画ですが、最近再び見る機会がありました。
本作品は非常に評価が分かれる作品ですが、私は非常に好きな作品です。
驚きなのが、10年前に見た感想より、現在の感想のほうが高評価という点です。
以前の感想としては、暗い雰囲気でとっつきづらく、内容もいまいちわかりずらかったという印象を持っていましたが、現在ではブレードランナーの世界観が洗練されて描写されており、唯一無二の作品になっていると思いました。
アジア風の街並み、荒廃した地球の不思議な世界観を表現し、見ていくうちに引き込まれていきます。
映画の流れとしては、元ブレードランナーであるデッカードが脱走したレプリカントを追跡していくというものです。
感情を持ち始めたレプリカント達は手強く、優秀なデッカードでも手を焼きます。
追跡の中で、ある女性のレプリカントと出会い、人間とレプリカントの境界線が非常に曖昧になっていくところも見どころです。
レプリカントを演じる役者陣の演技が非常に上手で、人造人間が感情を持ち始める様子が伝わり、感情移入してしまいました。
映画全体の構成も見事で
なぜ彼らは地球に来たのか。
なぜ彼らは戦うのか。
レプリカント達の気持ちの動き
映画が進むにつれ、徐々にそれらが明かされていきます。
物語がピークに達した時に、レプリカントの首領ロイ・バッティVSデッカードが始まります。
そしてどうなるか、、、。
ロイ・バッティとの戦いがそこら辺のホラー映画より怖いと言われる理由がわかります。
SFエンターテイナー作品としては最高峰の部類に入ると言ってもよいのではないでしょうか。
そしてワードがかっこよい。
ネーミングセンス抜群だと思います。
このころのリドリー・スコットは好きです。
ハリソン・フォードも若い。
DNA研究が進み、クローン動物が生まれているニュースを見ていると、近い将来に人造人間が造り出されるのでは、、、と考えてしまいます。
未鑑賞の人には是非おすすめします。
鑑賞済みの人で時間が経った人にもおすすめします。
最近続編である「ブレードランナー2049」もレンタル開始となっているので、予習してから続編を見るとつながる部分が多いですよ。
評価 9点(10年前は6点でした。見る回数や年代によって評価が変わる素晴らしい作品だと思います。)